2026:Q1 2026/04/10 発表
ARQQ 2026年Q1決算:上半期売上高が前年同期比で約9倍に急増、水準自体はなお小規模
本決算のポイント
アーキット・クアンタムは2026年度上半期(2025年10月〜2026年3月)の速報値として、売上高が62万〜63万ドルになる見通しを示した。前年度同期の6.7万ドルからは大きく伸びており、2025年度通期の53万ドルをも上半期だけで超える水準だ。
この伸びは、期の開始前に締結された契約に基づく既存デリバリーの収益認識と、期中に新たに署名した3件の契約によるものだと説明されている。現金及び現金同等物は2026年3月31日時点で約2890万ドルとなっており、事業の急拡大局面でも一定の現金クッションを保っている。
なお本リリースの数値はあくまで会計士によるレビューを経ていない速報値であり、正式な上半期決算は2026年5月に発表予定とされている。
抑えておくべきKPI
- 上半期売上高(速報): 約62万〜63万ドル(前年同期6.7万ドルから大幅増)
- 2025年度通期売上高(参考): 53万ドル
- 現金及び現金同等物: 約2890万ドル(2026年3月31日時点)
- 新規契約数: 期中に3件署名
投資家目線のインサイト
売上高が前年同期比で大きく伸びたことは事実だが、絶対額としては依然数十万ドル規模にとどまり、事業全体の商業的な立ち上がりを判断するにはまだ材料が乏しい。既存契約の履行状況や新規契約3件の内容についても具体的な規模や条件は開示されておらず、成長がどこまで再現性のあるものかは今回の情報だけでは見極めにくい。
会社自身も、この数値が未監査の速報であり独立会計士によるレビュー前であること、最終的な決算確定の過程で調整が入る可能性がある点を明記している。速報段階の数値であることを踏まえ、5月に予定される正式な上半期決算での確定値と補足説明を待つ必要がある。
現金水準約2890万ドルは、事業規模に対して当面の運転資金としては一定の余裕を示すが、資金調達や資金使途に関する言及は本リリースにはない。
今後の見どころ
次の焦点は2026年5月に予定される正式な上半期決算発表で、速報値からの調整の有無と、既存契約・新規契約の履行進捗がどこまで開示されるかが注目点になる。カンファレンスコールの日時も別途案内予定とされており、経営陣からの説明内容が売上の質を判断する手掛かりとなりそうだ。
また、契約の履行・解約・変更リスクについて本文で言及されている点も見逃せない。顧客側の契約継続や納品完了が前提となっている以上、今後の収益認識が計画どおり進むかどうかが業績の安定性を左右する。
出典
2025:Q2
アーキット・クアンタム(ARQQ)の2025年H1決算サマリー
売上高と収益
- 売上高: 6.7万ドル(前年同期:11.9万ドル、▲44%)
- GAAP純損失: ▲1,716.6万ドル(前年同期:▲4,767.2万ドル)
- 営業損失: ▲1,779.5万ドル(前年同期:▲1,663.8万ドル)
- 営業費用: 月平均2.4百万ドル
- SKA-Platform™およびNetworkSecure™の収益: 5.24万ドル
- プロフェッショナルサービスおよびメンテナンス収益: 1.45万ドル
- 売上減の要因: エンドユーザーの導入遅れと販売モデルの変更(直接販売→チャネル販売)
営業費用と利益
- 管理費(オペレーション費用): 1,796.3万ドル(前年同期:1,675.7万ドル)
人件費:982.2万ドル(前年:1,200.6万ドル)
外貨損失:454.2万ドル(前年は為替差益)
減価償却・償却費:計44万ドル
株式報酬費用:▲137.9万ドル(前年:▲29.3万ドル)
キャッシュと財務状況
- 現金・現金同等物: 2,478.1万ドル(前期末:1,870.5万ドル)
- 営業キャッシュフロー: ▲1,247.6万ドル(前年同期:▲2,265.5万ドル)
- 投資キャッシュフロー: +31.3万ドル(前年:▲40万ドル)
- 財務キャッシュフロー: +1,821.7万ドル(主に株式発行による資金調達)
- ATMプログラムによる発行株式: 約114万株で1,655万ドルを調達
技術・事業ハイライト
- 米国国防総省(DoD)向け初契約を獲得
パートナー企業を通じたSKAソフトウェアの提供
米国NSAのCSfC基準に準拠、国防分野の拡大を目指す
– 欧州大手IT企業とのエンタープライズセキュリティ契約を締結
– 欧州Tier1通信事業者との3年契約
Arqit NetworkSecure™をNaaSの一部として導入
– Intelとの提携強化
TDXチップレベルでの「秘密計算」との統合実証に成功
通信/AI/仮想HSM領域への適用展開中
– 世界初:CSfC準拠の量子セーフMACPアーキテクチャをIntelと開発
今後の指針と注力分野
- 重点市場:
通信(Telco)
政府・国防(特に米国、欧州)
– 展開戦略:
直接販売からB2B2Bモデル(OEM/パートナー経由販売)への転換
体制効率化:全社員数は72名(予算83名)、必要部門への再配置を実施
– 想定される将来市場:
金融(取引インフラの保護)
製薬(知財保護)
データセンター(マルチドメイン下の秘密計算)
アーキットは2025年前半で新たな大型契約(米国DoD・Tier1通信事業者)を獲得し、商用フェーズへ本格移行を始めた。
売上自体はまだ少額だが、製品がようやく稼働し始めたばかりであり、今後の収益認識と継続契約への転換が進めば黒字化も視野に入る展開。
量子耐性暗号の需要拡大を背景に、政府・インフラ・通信領域での競争優位性が鮮明になってきており、「Q Day(量子攻撃リスク)」に備えた移行ソリューションの中核銘柄として注目度が高い内容となっている。
