2026:Q3 2026/10/21 発表(引け後)
- 発表翌営業日+4.27%寄付 +8.29%
- 5営業日+6.53%
QS 2026年Q3決算:量産ラインと新市場開拓が同時進行、焦点は赤字縮小より事業の広がりに
クアンタム・スケープの2026年第3四半期は、技術実証から商業化フェーズへと軸足を移しつつあることが鮮明になった四半期だった。2月に稼働したEagle Lineは顧客サンプル供給の主力ラインとなり、そこで得た知見をもとにMuehlbauer Groupとのパートナーシップで100メガワット時(MWh)規模の商業生産ラインを計画、2028年の生産開始を目指すと発表した。
事業面では、AIデータセンター向けの「QS PowerBlock」をOpen Compute Project Global Summitで発表し、従来型リチウムイオン電池と比べて4倍の電力密度・5倍のランタイムを示すなど、QSDC(データセンター)という新しい市場での具体的な手応えが見えてきた。自動車領域ではHondaとの契約に基づく初の顧客請求を計上し、新たな大手モビリティ企業との契約も締結している。
財務面では、GAAP純損失が8450万ドル、Adjusted EBITDA損失が6070万ドルと前年同期から損失幅が縮小し、通期ガイダンスのレンジ内で着地している。通期のAdjusted EBITDA損失ガイダンス(2.5億〜2.75億ドル)、設備投資ガイダンス(2700万〜3700万ドル)はいずれも据え置きとなった。
抑えておくべきKPI
- GAAP純損失: 8450万ドル(前年同期は1.058億ドルの損失、損失幅縮小)
- Adjusted EBITDA損失: 6070万ドル(前年同期は6140万ドル、ほぼ横ばい)
- 顧客請求額(Customer billings): 980万ドル(Honda契約・QSAS向けの初請求を含む)
- 期末流動性: 8.198億ドル
投資家目線のインサイト
今回の決算で特に目を引くのは、自動車一本足だった事業ポートフォリオがデータセンター・防衛/航空宇宙という新しい柱へ広がり始めた点だ。QSDC向けのQS PowerBlockは、固体電池のセラミックセパレータが300℃超でも熱的に安定という安全性の優位性を顧客・第三者ラボ双方で検証済みとしており、AIインフラ向け電源という新市場での具体的な差別化材料になっている。
QSAS(防衛・航空宇宙・先端用途)でも初の顧客請求が発生し、2030年までに最大750億ドルの市場規模があるとの見方を示した。ただし顧客請求額自体はまだ980万ドルと小さく、売上の実質的な柱に育つまでにはまだ時間がかかる段階であることは踏まえておきたい。
財務面では損失が前年並みに抑えられ、通期ガイダンスも据え置かれた一方、期末の現金・現金同等物は7560万ドルまで減少し、流動性の大部分はマーケタブル証券(7.44億ドル)に移っている点はバランスシートの構成変化として留意しておきたい。
今後の見どころ
11月11日に京都で開催される第3回Solid-State Battery Symposiumでは、QSE-5を超える次世代技術プラットフォームの詳細が明らかにされる予定で、自動車顧客との協業モデルの方向性を占う重要なイベントになる。
今後は、100MWh生産ラインの2028年稼働に向けた進捗、QS PowerBlockの電力電子・電池管理システムとの統合状況、そして顧客請求額が自動車以外の部門でどこまで積み上がるかが、事業の広がりを測る指標になるだろう。
出典
2026:Q2 2026/07/22 発表(引け後)
- 発表翌営業日-12.86%寄付 -5.96%
- 5営業日-15.50%
QS 2026年Q2決算:ホンダとの新提携で自動車事業が前進、Adjusted EBITDA損失は6420万ドルで想定通り
QSの決算ハイライト
QuantumScapeの2026年第2四半期は、トヨタに続くもう一つの大手自動車メーカーであるホンダとの複数年契約締結が最大のトピックとなった。固体電池技術を自動車用途に展開するための提携で、既存のフォルクスワーゲン・パワーコとの協業関係も、車載用セル開発や大型フォーマットセルに焦点を当てたマイルストーンと支払い条件の更新を伴って継続している。
財務面では、GAAP営業費用は1.061億ドル、GAAP純損失は9820万ドル、Adjusted EBITDA損失は6420万ドルとなり、いずれも会社の想定の範囲内で推移した。前年同期のGAAP純損失1.147億ドル、Adjusted EBITDA損失6300万ドルと比べても、損失の規模はほぼ横ばいの水準にある。
通期のAdjusted EBITDA損失ガイダンス2.5億〜2.75億ドルは据え置きとなった一方、資本支出ガイダンスは2700万〜3700万ドルへと下方修正され、資本規律とコスト削減の成果が反映された形だ。四半期末の流動性は8.59億ドルとなっている。
抑えておくべきKPI
- GAAP営業費用: 1.061億ドル(前年同期の1.236億ドルから減少)
- GAAP純損失: 9820万ドル(前年同期の1.147億ドルから縮小)
- Adjusted EBITDA損失: 6420万ドル(前年同期は6300万ドル)
- 顧客請求額(customer billings): 1080万ドル、四半期末流動性は8.59億ドル
重要なインサイト
ホンダとの提携は、同社の技術に対する「最も厳格な評価プロセスの一つ」を経て成立したとされ、自動車顧客基盤の質を示す材料といえる。既存のトップ10自動車OEM2社との共同開発契約に加え、新たなOEMへのセル出荷も始まったとの言及があり、自動車事業の裾野が徐々に広がっている様子が読み取れる。
同時に注目すべきは、QSEV(電気自動車)、QSDC(AIデータセンター)、QSAS(航空宇宙・防衛)という3つの事業部門を新設した点だ。QSDCはAIデータセンターの800Vアーキテクチャ向けにODMとの設計協業を進め、QSASは米国の主要防衛関連企業へのQSE-5セル出荷を実施済みという。自動車一本足だった収益機会が多角化に向かい始めている段階と見てよいだろう。
一方でパイロット生産ラインEagle Lineは、コアツールの稼働率が90%を超え、生産性の主要指標も目標に達しているとの報告があった。下半期にセル出力を倍増させる計画が示されたことは、実際の量産能力を測る次の試金石になる。
今後の見どころ
下半期に向けては、Eagle Lineでのセル出力倍増計画の進捗と、3事業部門それぞれへの顧客サンプル出荷の加速状況が最大の注目点になる。特にQSDCとQSASは顧客エンゲージメントの初期段階にあり、開発契約や購入コミットメントへの転換が今後どの程度進むかが鍵となる。
財務面では、資本支出ガイダンスの下方修正が示すコスト管理の姿勢と、Adjusted EBITDA損失ガイダンスの据え置きとのバランスを継続して確認したい。ホンダやパワーコとの提携が、マイルストーン達成に応じた支払いという形でどう財務に反映されていくかも追うべき点だ。
出典
2025:Q1 2025/04/23 発表(引け後)
- 発表翌営業日-0.50%寄付 +0.00%
- 5営業日-1.76%
クアンタムスケープ(QS)の2025年度Q1決算サマリー
売上高と収益
- 年間売上高: 該当なし(商業売上はまだ発生せず)
- GAAP純利益: ▲1億1,442.3万ドル(前年同期は▲1億2,064.8万ドル)
- 調整後純利益(Non-GAAP): 非開示
- 調整後EBITDA: ▲6,456万ドル(前年同期は▲7,617.6万ドル)
- その他指標: 総包括損失は▲1億1,475.1万ドル、1株あたり損失は▲0.21ドル
営業費用と利益
- GAAP営業費用: 1億2,357.5万ドル(R&D費用:9,558.9万ドル、一般管理費:2,798.6万ドル)
- Non-GAAP営業費用: 非開示(ただしストックベース報酬4,063.9万ドル含む)
- EBITDA損失(ある場合): 上記参照
- 調整後純損失: 非開示
契約と受注(Bookings)
- 年間受注高: 非開示
- 第1四半期受注: 非開示(ただしPowerCoとの共同開発や村田製作所との提携発表あり)
- 契約顧客数: 非開示
- 大口顧客構成:
フォルクスワーゲン傘下PowerCoと技術開発
村田製作所とセラミックス分野で協業開始
キャッシュと財務状況
- 現金残高(年末): 8億6,030万ドル(現金・現金同等物と短期投資合算)
- 借入・返済などの動き: 株式発行による調達1,007万ドル、ストックオプション行使収入1,118万ドル
- 自由キャッシュフロー(FCF): 非開示(営業CFは▲6,074.9万ドル)
技術・事業ハイライト
- 製品開発や技術的成果:
QSE-5セルのサンプル出荷開始、2026年に実地テスト予定
新型セパレーター「Cobra」プロセスの導入開始(量産性向上が期待される)
- パートナーシップや採用事例:
PowerCoと共同で量産技術開発を進行中
村田製作所とセラミック製造で戦略的提携開始
- 市場でのポジション: 全固体リチウム金属電池分野での技術リーダー、PowerCoによる量産適用計画あり
2025年ガイダンス(または翌期ガイダンス)
- 売上見通し: 商業出荷・売上は未計上の見込み(パイロット段階継続)
- EBITDA見通し: 通期調整後EBITDA損失は2億5,000万~2億8,000万ドルを想定
- その他の注目点:
2025年中にCobraプロセスを標準化予定
QSE-5 B1セルの出荷開始を年内に目指す
開発ロードマップとグローバルライセンス展開を含む戦略文書を公表済
クアンタムスケープは商業売上のない状態が続く一方で、量産技術(Cobraプロセス)の前倒し導入と顧客向けサンプル出荷開始により、商用化への確実なステップを踏んでいる。Volkswagen傘下PowerCoとの連携や、村田製作所との提携により、技術的信頼性と製造スケーラビリティの裏付けを獲得。依然として巨額の赤字とキャッシュ消費が続くが、2026年以降の商業化を見据えた転換点に差し掛かっている。
