このサイトは、私( @mifsee )が個人的に学びながら企業分析や銘柄分析を進め、その成果をまとめたものです。
あくまで私の個人的な分析記録であり、内容には誤りや実際と異なる情報が含まれているかもしれません。ご覧になる場合は予めご了承ください。
はじめに
2026年10月21日、ウェブサイトを動かすプログラム言語「PHP」に、重大な脆弱性が2つ見つかったと公表されました。通称「PHP2Shell」です。ウェブの約7割が PHP を使っており、WordPress で作られたサイトも対象になります。オーストラリアやヨーロッパの国々では、政府のサイトが対策のために一時停止しました。
この出来事で目を引いたのは、規模の大きさだけではありません。脆弱性の発見に AI が使われ、公表の数日前から悪用の試みがあり、公表の直後には攻撃が一気に増えたことです。攻める側の速さに、守る側がどう追いつくのか。この問いが、サイバーセキュリティ業界のお金の流れを変えつつあります。
この記事では、PHP2Shell で何が起きたかを公的機関と各社の発表で確かめたうえで、サイバーセキュリティの「どこで誰が稼いでいるか」を地図にし、各社が米SECに出している決算資料から注目の8銘柄を選びました。数字は2026年10月27日時点で公表済みの資料によるものです。
PHP2Shellで何が起きたのか?
ウェブの約7割に関わる脆弱性
PHP2Shell は、CVE-2026-109618 と CVE-2026-109619 の2つの脆弱性の総称である。米国のサイバー防衛機関 CISA によると、ログインしていない攻撃者がサーバー上で好きなプログラムを動かせてしまう(遠隔でのコード実行)もので、ウェブの要求を処理するすべての PHP が影響を受ける。PHP 側の深刻度の評価は、10点満点で9.2だった。
- 規模: ウェブの約70%が PHP を使っている(TechCrunch)。Palo Alto Networks の調査部門は、10月23日時点でインターネットから見える危険な可能性のあるサーバーを2,260万件以上と数えた
- 古さ: 脆弱性は10年以上前から PHP の中に眠っていたとされる
- 政府サイトの停止: オーストラリアのサイバー機関のサイト(cyber.gov.au)を含む連邦政府のサイトが停止したほか、フランス・フィンランド・デンマーク・オランダの政府サイトやロッテルダム港にも影響が出た(iTWire)
- 公的機関の対応: CISA は10月26日に、2件を「実際に悪用された脆弱性」の一覧に加え、すぐに直せない PHP のシステムは「直すまで止める」よう求めた
発見にAI、公表前から悪用
経緯を並べると、攻撃と防御の速さの差が見えてくる。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 発見 | セキュリティ会社の Wiz と Calif、OpenAI が、AI を補助に使った調査で見つけた |
| 10月17日 | Amazon の観測網が、公表の4日前に悪用の試みを記録した |
| 10月20日夜 | Palo Alto Networks の防御製品が、この攻撃の遮断を始めた(米国時間、公表の前日) |
| 10月21日 | PHP が修正版を公開。CISA が緊急の注意喚起を出した |
| 公表の直後 | Cloudflare の CEO は、悪用の試みが「爆発的に」増えたと述べた |
| 10月26日 | CISA が「実際に悪用された脆弱性」の一覧に追加した |
一方で、実際に侵入に成功した被害の全体像は、まだはっきりしていない。脅威情報の Recorded Future は、報告されている情報だけでは成功した攻撃の規模は分からないとし、修正の代わりに防御製品に頼るべきではないとも書いている。
なぜ転換点といえるのか
PHP2Shell が示したのは、次の3つである。
- AI で脆弱性が見つかる速さ: 10年以上見逃されてきた欠陥が、AI を使った調査で表に出た。同じ道具は攻撃する側も使える
- 「直すまで」の空白: 修正版が出ても、何千万台ものサーバーがすぐに直るわけではない。その間をどう守るかが問われた
- 古い技術の弱さ: TechCrunch は、古い技術の弱点を突く事件の「流れの始まりかもしれない」と書いている
脆弱性は見つかった瞬間から攻撃に使われる前提で、直すまでの空白を自動で埋められるかどうかが、守る側の価値になりつつある。この流れは、企業がバラバラの製品を少数の基盤にまとめる動きと重なっている。2026年2月には Palo Alto Networks が本人確認の CyberArk の買収を完了し、10月には Proofpoint が Varonis を約63億ドルで買収すると発表した。Proofpoint は狙いを「AI で加速する脅威から守る、完全なセキュリティ基盤」と説明している。
サイバーセキュリティの「どこで稼ぐか」地図
サイバーセキュリティは、守る場所によっていくつかの分野に分かれる。MiFsee が注目する8社を、分野ごとに並べると次のとおり。

| 分野 | 守るもの | 注目企業 |
|---|---|---|
| ネットワーク | 会社の出入口(ファイアウォール) | フォーティネット |
| クラウドと境界 | ウェブサイトやクラウドの手前で攻撃を止める。社内外を問わず毎回確かめる(ゼロトラスト) | クラウドフレア、ゾーンスケーラー |
| 端末と監視 | パソコンやサーバーへの侵入を見つけて止める | クラウドストライク、センチネルワン |
| 本人確認 | 人と AI エージェントの身元と権限 | オクタ |
| データと復旧 | 侵入された後に、データを元に戻す | ルーブリック |
| 全体をまとめる | 上の分野を1つの基盤で | パロアルト・ネットワークス |
PHP2Shell のような攻撃では、ウェブの手前で止める(クラウドと境界)、侵入されたサーバーで不審な動きを見つける(端末と監視)、被害が出たら元に戻す(データと復旧)と、複数の層が順に効く。1つの層だけでは守りきれないことが、各社が守る範囲を広げ、買収で基盤をまとめる理由になっている。
MiFsee厳選のサイバーセキュリティ関連銘柄8選
選ぶ基準は、MiFsee のテーマ記事共通の3つである。
- テーマの事業が会社の中心、またはその売上が開示されている
- 売上が伸びている(直近の決算が前年同期比でプラス)
- 数字で言える材料がある
パロアルト・ネットワークス(PANW)|分野をまたいで1つの基盤にまとめる本命

ネットワーク・クラウド・端末と監視・本人確認までを手がける、サイバーセキュリティの最大手の一角である。個別の記事は パロアルト・ネットワークスの記事 にまとめている。
選んだ理由
- 2026年5〜7月期の売上は34.1億ドルで、前年同期比+34%だった
- 次世代セキュリティの年間継続収益(ARR)は91.0億ドルで、前年同期比+63%。将来の売上になる契約残高も212億ドル(+34%)に積み上がった
- 2026年2月に本人確認の CyberArk の買収を完了し、AI エージェント向けの Console も買収した。分野をまたいだ「まとめ役」の位置を固めている
- PHP2Shell では、同社の防御製品が公表の前日(米国時間10月20日夜)から攻撃の遮断を始めていた
- CEO は「最新の AI の進歩が、サイバーセキュリティを CIO の優先順位の最上位に押し上げている」と述べている
懸念
- 買収の統合費用などで、GAAP の営業利益は1.72億ドル(前年同期4.97億ドル)に減った。売上に対しては約5%(計算)にとどまる
- 2027年7月期の次世代セキュリティ ARR の見通しは+22〜23%で、伸びは落ち着く見込み
クラウドストライク(CRWD)|端末の監視から AI の防御へ

パソコンやサーバーへの侵入を見つけて止める「エンドポイント」の代表格で、クラウド上の1つの基盤(Falcon)に機能を足していく形で成長してきた。
選んだ理由
- 2026年5〜7月期の売上は14.7億ドルで、前年同期比+26%
- 年間継続収益(ARR)は58.4億ドル(+25%)。このうち新たに積み上がった分は3.33億ドルで、前年同期比+51%と過去最高だった
- 複数の機能をまとめて契約する Falcon Flex の顧客の ARR は22.9億ドルを超え、前年同期比+101%
- CEO は「すべての企業が AI で動くようになり、それを守ることは当社の歴史で最大の市場機会だ」と述べている
懸念
- GAAP では営業赤字(3,320万ドル)が続いている
センチネルワン(S)|AI を使う防御と、AI を守る防御

クラウドストライクと同じエンドポイントの会社で、AI で自動的に脅威を止める製品が中心である。個別の記事は センチネルワンの記事 にまとめている。
選んだ理由
- 2026年5〜7月期の売上は2.92億ドルで、前年同期比+21%
- 年間継続収益(ARR)は12.18億ドル(+22%)
- 2027年1月期の売上と営業利益(調整後)の見通しを引き上げた。調整後の営業利益率は10%(前年同期2%)に上がった
懸念
- GAAP の営業利益率はマイナス31%で、黒字化はまだ先
フォーティネット(FTNT)|ファイアウォールで稼ぐ力が最も高い

会社の出入口を守るファイアウォールの大手で、ファイアウォール・SD-WAN(拠点間の通信網)・SASE(クラウド経由の守り)を1つの基本ソフト(FortiOS)にまとめているのが特徴である。
選んだ理由
- 2026年4〜6月期の売上は20.5億ドルで、前年同期比+26%。機器の売上は+52%だった
- 請求額(将来の売上の先行指標)は23.7億ドルで、前年同期比+33%
- GAAP の営業利益率は34%、フリーキャッシュフローは9.66億ドルで、8社の中で稼ぐ力が最も高い
- 2026年の売上の見通しを、前年比+19%に引き上げた
懸念
- 機器の売上は、企業の買い替えの周期に左右されやすい
ゾーンスケーラー(ZS)|社内外を問わず毎回確かめる「ゼロトラスト」

社員がどこから接続しても、クラウド上で毎回確かめてから通す「ゼロトラスト」の代表格である。
選んだ理由
- 2026年5〜7月期の売上は8.98億ドルで、前年同期比+25%
- 年間継続収益(ARR)は37.71億ドル(+25%)。買収した Red Canary の分を除いても+20%だった
- CEO は、AI エージェントが生む脅威への対策と、AI を安全に使うための需要を成長の理由に挙げている
懸念
- 2027年7月期の売上の見通しは+16.6〜17.5%で、伸びは鈍る
- 5〜7月期のフリーキャッシュフローは、設備投資がかさんで売上の7%(前年同期24%)に下がった
クラウドフレア(NET)|ウェブの手前で攻撃を受け止める

世界中に置いたサーバー網で、ウェブサイトの手前で攻撃を受け止め、表示も速くする会社である。PHP2Shell では、公表直後の攻撃の急増を最前線で観測した。
選んだ理由
- 2026年4〜6月期の売上は6.96億ドルで、前年同期比+36%と、厳選8社の中でルーブリックに次いで高い
- 1年以内に売上になる契約残高も、前年同期比+35%だった
- CEO は、AI エージェントがウェブを使う時代の基盤(「エージェントのインターネット」)を自社が担うと述べている
懸念
- 組織の再編費用(1.51億ドル)などで、GAAP では営業赤字(2.06億ドル)だった
オクタ(OKTA)|人と AI エージェントの「身元」を管理する

社員や顧客がログインするときの本人確認(アイデンティティ管理)の大手である。
選んだ理由
- 2026年5〜7月期の売上は8.05億ドルで、前年同期比+11%
- GAAP の営業利益率は13%(前年同期6%)、フリーキャッシュフローは売上の28%で、利益が厚くなってきた
- CEO は「すべての AI エージェントに、信頼できる身元と、何にアクセスし何をしてよいかの明確な管理が必要だ」と述べている。AI エージェントが増えるほど、本人確認の対象も増える
懸念
- 売上の伸びは厳選8社の中で最も低い。パロアルトが CyberArk を買って本人確認に入ってきたことで、競争も強まる
ルーブリック(RBRK)|侵入された後の「最後の砦」

データのバックアップと、攻撃を受けた後の復旧を手がける会社である。会社は「データ保護」と「サイバー攻撃からの回復力(サイバーレジリエンス)」を事業の中心に掲げている。
選んだ理由
- 2026年5〜7月期の売上は4.27億ドルで、前年同期比+38%と、厳選8社の中で最も高い
- サブスクリプションの年間継続収益(ARR)は16.6億ドル(+33%)、クラウドの ARR は14.8億ドル(+39%)
- PHP2Shell のように「直すまでの空白」に侵入されることを前提にすると、元に戻せる仕組みの価値は上がる
懸念
- GAAP では営業赤字(7,190万ドル)が続いている
厳選から外した関連銘柄
| 会社 | 中身 | 外した理由 |
|---|---|---|
| チェック・ポイント(CHKP) | ファイアウォールの老舗。2026年4〜6月期の GAAP 営業利益率は27% | 売上の伸びが前年同期比+1%にとどまる |
| テナブル(TENB) | 弱点を洗い出す「エクスポージャー管理」 | 売上の伸びが+8.6% |
| クオリス(QLYS) | クラウドで弱点を洗い出す。GAAP 営業利益率は34% | 売上の伸びが+11%で、成長より利益の会社 |
| バロニス(VRNS) | データの守り。SaaS の ARR は+52% | 2026年10月、Proofpoint に1株49.75ドルの現金で買収されることで合意。2027年前半に上場をやめる見込み |
| CACI(CACI) | 米政府向けの IT・情報の会社。受注額は48億ドル | サイバーは事業の一部で、売上の伸び(+8.2%)の多くは買収による |
| クリア・セキュア(YOU) | 空港などの本人確認。会員は4,350万人 | 物理的な本人確認が中心で、サイバー攻撃の防御とは事業の性格が違う |
直近6か月の値動き(タップで拡大)
右上:6か月騰落率 左下:期間最高値からの下落率 橙:50日線 灰:200日線 チャートは毎週更新
以前この記事で取り上げていた CyberArk(CYBR)は、2026年2月に Palo Alto Networks による買収が完了し、上場をやめた。
サイバーセキュリティ関連の ETF
個別の銘柄を選ばずにテーマ全体に投資する方法として、サイバーセキュリティの ETF がある。
| ETF | 連動する指数 | 経費率 | 補足 |
|---|---|---|---|
| ファースト・トラスト・ナスダック・サイバーセキュリティ ETF(CIBR) | Nasdaq CTA Cybersecurity Index | 0.58%(2026年2月時点) | 保有45銘柄(2026年10月26日時点) |
| グローバルX サイバーセキュリティ ETF(BUG) | Indxx Cybersecurity Index | 0.50%(2026年10月26日時点) | 分配は年2回 |
出典:各運用会社の公式ページ。
日本の関連企業
MiFsee では日本株を深く調べていないため、評価はせず、厳選の対象外としている。サイバーセキュリティを主な事業として、会社自身が説明している会社を事実だけ載せる。
| 会社 | コード | 会社の説明 |
|---|---|---|
| 網屋 | 4258 | ログの監視「ALog」やネットワーク対策「ベローナ」など、データセキュリティとセキュリティサービスを手がける |
| FFRIセキュリティ | 3692 | サイバーセキュリティの中核技術を研究開発する国内メーカー。端末を守る「FFRI yarai」と、監視・初動対応のサービス |
| グローバルセキュリティエキスパート | 4417 | 企業向けのセキュリティ教育・コンサルティング・製品の導入。2026年9月にキーウェアソリューションズと資本業務提携 |
| JBCCホールディングス | 9889 | 企業の DX を支援する IT サービス会社で、セキュリティのサービスも手がける |
直近6か月の値動き(タップで拡大)
右上:6か月騰落率 左下:期間最高値からの下落率 橙:50日線 灰:200日線 チャートは毎週更新
以前この記事で取り上げていたボードルア(4413)は、事業の中心が IT インフラで、投資ファンドによる株式の公開買付けも出ているため外した。
サイバーセキュリティ銘柄を見るうえでの注意点
大きな事件は、株価にすぐ効くとは限らない
PHP2Shell のような事件で、セキュリティの重要性への関心は高まる。ただ、企業が予算を増やして契約を結び、それが売上になるまでには時間がかかる。事件の直後の株価の動きと、決算に表れる数字は分けて見る必要がある。
統合が進むほど、勝ち負けがはっきりする
企業が製品を少数の基盤にまとめるほど、まとめ役になる会社には有利で、1つの機能だけを売る会社には不利になる。厳選から外した会社の中には、成長が鈍ったり、買収される側に回ったりした会社もある。
赤字の会社と、利益の厚い会社が混ざっている
フォーティネットやオクタのように GAAP でしっかり利益を出す会社がある一方、クラウドストライク・センチネルワン・クラウドフレア・ルーブリックは GAAP では営業赤字である。調整後の利益や年間継続収益だけでなく、GAAP の利益も合わせて確かめたい。
まとめ
2026年10月の PHP2Shell は、AI で脆弱性が見つかる速さと、公表直後の一斉攻撃をはっきり示しました。攻める側が速くなるほど、「直すまでの空白」を自動で埋める守りと、複数の層をまとめて守る基盤の価値が上がります。実際に業界では、パロアルトによる CyberArk の買収や、Proofpoint による Varonis の買収など、統合の動きが進んでいます。
注目した8社は、どれも直近の決算で売上が前年を上回り、多くが2割以上伸びています。一方で、GAAP では赤字の会社も多く、次の決算で年間継続収益の伸びと利益の両方を確認しながら、この記事を更新していきます。
私は パロアルト・ネットワークス やクラウドストライク、 センチネルワン などに投資してきましたが、「CIBR」などの ETF を定期的に積み立てていくことも、視野に入れるとよいかもしれません。












