このサイトは、私(@mifsee)が個人的に学びながら企業分析や銘柄分析を進め、その過程を記録としてまとめているものです。
あくまで個人の調査・整理を目的とした内容であり、誤りや実際と異なる情報が含まれる可能性があります。
また、MifseeではAI技術を活用した運用や、技術習得を目的とした実験的な取り組みも行っています。ご覧いただく際には、その点をご理解のうえご利用ください。
はじめに
米国の投資風景は金利の変動が大きな役割を果たすことが予想されます。この変動性の高い環境が見込まれる中、債券市場への関心が高まっています。
これまで私は、債券投資については手を出さず、主に株式やコモディティなど他の投資クラスに焦点を当ててきました。
しかし、コロナウイルスのパンデミックを受けて米国連邦準備制度(FRB)が採用した金利引き上げというインフレ対策が一つの節目を迎え、金利の低下が見込まれる新たな投資環境が形成されつつあります。
(ここまでは、この記事を最初に書いた2024年2月時点の考えです。2026年10月に、数字と内容を運用会社の最新の書類で見直しました。)
TMF は、米国の長期国債の指数の「1日の値動き」を3倍にして返すことを目指すETFである。長期金利が下がって長期国債の価格が上がる日には約3倍上がり、金利が上がって価格が下がる日には約3倍下がる。
長期国債そのものに投資する手段としては、TLT(iシェアーズ 米国国債20年超 ETF)やEDV(バンガード 超長期米国債 ETF)がある。TMF はそれらとは性格がまったく違い、運用会社自身が目論見書で「ポートフォリオを頻繁に見て管理する、知識のある投資家だけが使うよう設計されている」と書いている商品である。
ここでは、運用会社 Direxion が米国証券取引委員会(SEC)に提出した目論見書・年次報告書・半期報告書をもとに、TMF の仕組み、中身、TLT との違い、実際の成績、リスクを順に見ていく。
TMF とはどんな ETF?
TMF の基本情報は以下。
- 正式名称: Direxion Daily 20+ Year Treasury Bull 3X ETF(2026年に「…Bull 3X Shares」から名称変更)
- 日本語の名称: Direxion デイリー 20年超 米国債 ブル3倍 ETF
- ティッカー: TMF(上場先は NYSE Arca)
- 運用会社: Direxion(レバレッジ型・インバース型のETFを専門に扱う米国の運用会社)
- 運用開始: 2009年4月
- 目標: ICE U.S. Treasury 20+ Year Bond Index の1日の値動きの300%(手数料・経費を差し引く前)
- 純資産総額: 約22億ドル(2026年7月31日時点。2025年10月末は約45億ドル)
- 経費率: 0.90%(免除後。免除前は1.01%)
出典: 要約目論見書(2026年2月27日)、年次報告書(2025年10月期)、保有明細の報告(N-PORT、2026年7月31日時点)
連動する指数:ICE U.S. Treasury 20+ Year Bond Index
連動先の ICE U.S. Treasury 20+ Year Bond Index は、残りの期間(満期までの年数)が20年を超える、固定金利の米国債で構成される指数である。物価連動債や、利息を切り離したゼロクーポン債(STRIPS)は含まない。2025年12月末時点の構成銘柄は45本で、毎月末に入れ替えが行われる(要約目論見書)。
TMF は2016年5月2日に、連動先を NYSE 20 Year Plus Treasury Bond Index からこの指数に切り替えた。それより前の成績は、旧指数の3倍を目指していた時期のものである(要約目論見書)。
この指数は、TLT が連動する指数と同じである。
長期国債と金利の関係
債券の価格は、金利と逆の方向に動く。金利が上がると、すでに発行されている低い金利の債券は相対的に魅力が下がり、価格が下がる。金利が下がると、その逆になる。
満期までの期間が長い債券ほど、この影響を長く受けるため、金利が動いたときの価格の変化が大きい。TMF はその長期国債の値動きをさらに3倍にしているため、金利のわずかな変化でも値段が大きく動く。目論見書も主なリスクの1つとして「金利の上昇によって債券価格が全体に下がる可能性」を挙げている。
長期国債と金利の関係は「TLTとは?長期債券と金利の関係」でも詳しく解説している。
TMF の「3倍」の仕組みは?
3倍になるのは「1日」だけ
TMF が目指すのは、その日1日の指数の値動きの3倍である。1週間や1年といった長い期間で、指数の3倍になることは目指していない。
レバレッジETFは、毎日の取引の終わりに、翌日も3倍の値動きになるよう持ち高を調整し直す。そのため、値動きが上下に揺れると、指数が元の水準に戻っても TMF は元に戻らない。
簡単な例で見る(計算のための仮の数字)。
| 指数 | 3倍のETF | |
|---|---|---|
| 1日目:指数が10%上がる | 100 → 110 | 100 → 130 |
| 2日目:指数が約9.1%下がる | 110 → 100 | 130 → 約94.5 |
| 2日間の結果 | ±0% | 約−5.5% |
指数は元に戻ったのに、3倍のETFは約5.5%減っている。この差は、値動きが激しいほど、また期間が長いほど大きくなる。
目論見書の試算:指数が横ばいでも損をする
目論見書には、1年間の指数の値動きの激しさ(年率の変動率)ごとに、TMF のリターンがどうなるかの試算表が載っている。指数が1年で横ばい(0%)だった場合の行を抜き出す。
| 指数の年間の変動率 | 10% | 25% | 50% | 75% | 100% |
|---|---|---|---|---|---|
| 指数が横ばいのときの TMF | −3.0% | −17.1% | −52.8% | −81.5% | −95.0% |
出典: 要約目論見書(2026年2月27日)。経費・借入コスト・配当をゼロとした仮定の数字
参考までに、この指数の2025年末までの5年間の変動率は年率15.65%、暦年で最も高かった年は19.70%だった(要約目論見書)。試算表の「10%〜25%」の列の間にあたり、長期金利が1年を通して横ばいでも、TMF は数%〜十数%減りうる水準である。
TMF の中身は?
中身は「TLT」と「TLT を対象にしたスワップ契約」
TMF は、長期国債を直接たくさん持っているわけではない。実際の中身は、同じ指数に連動する ETF の TLT と、銀行などと「TLT の値動き(利息を含む)を受け取る」契約(トータル・リターン・スワップ)の組み合わせである。
| 時点 | スワップ契約 | 投資信託(TLT) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 2025年10月31日 | 228.1% | 71.9% | 300.0% |
| 2026年4月30日 | 232.7% | 67.3% | 300.0% |
※純資産に対する比率。出典: 年次報告書(2025年10月期)、半期報告書(2026年4月期)
300%のうち2倍以上はスワップ契約によるものである。このほか、純資産の4割前後を、米国債などで運用する短期のマネー・マーケット・ファンドで持っている(契約の担保や支払いに備える資金)。
2026年7月末の保有明細では、スワップの相手先は Bank of America、J.P. Morgan、Barclays、Goldman Sachs、Citibank、UBS、BNP Paribas、野村の8社だった(N-PORT)。
TMF と TLT・EDV の違いは?
TLT と EDV は、どちらもレバレッジを使わずに長期国債に投資するETFである。
| TMF | TLT | EDV | |
|---|---|---|---|
| 運用会社 | Direxion | iシェアーズ(ブラックロック) | バンガード |
| 目標 | 指数の1日の値動きの3倍 | 指数に連動(1倍) | 指数に連動(1倍) |
| 連動する指数 | ICE U.S. Treasury 20+ Year Bond Index | 同じ | Bloomberg U.S. Treasury STRIPS 20–30 Year Equal Par Bond Index |
| 中身 | TLT + TLT を対象にしたスワップ | 残存20年超の米国債 | 残存20〜30年のゼロクーポン米国債(STRIPS) |
| 経費率 | 0.90%(免除後) | 0.15% | 0.05% |
| 長く持つと | 指数の3倍からずれる。横ばいでも減りうる | 指数に近い成績 | 指数に近い成績 |
出典: 各ETFの要約目論見書(TMF 2026年2月27日、TLT 2026年6月29日、EDV 2026年6月30日)
TMF と TLT は同じ指数を見ている。違いは「1日の値動きを3倍にするかどうか」だけで、その結果、長く持ったときの成績が大きく分かれる(次の節)。
EDV は、利息の支払いが無いゼロクーポン債に投資するため、同じ長期国債でも TLT より金利の変化に敏感に動く。
同じ長期国債を対象にした商品には、ほかに次のようなものがある。
- TMV(Direxion Daily 20+ Year Treasury Bear 3X ETF): TMF の姉妹ファンド。同じ指数の1日の値動きの逆方向の3倍を目指す。長期国債の価格が下がる(金利が上がる)日に上がる
- UBT(ProShares Ultra 20+ Year Treasury): 長期国債の指数の1日の値動きの2倍を目指す
- TTT(ProShares UltraPro Short 20+ Year Treasury): 長期国債の指数の1日の値動きの逆方向の3倍を目指す
TMF の実際の成績は?
会計年度ごとの成績
| 会計年度(10月末まで) | TMF | 指数 |
|---|---|---|
| 2022年10月期 | −74.89% | −33.65% |
| 2023年10月期 | −41.97% | −9.93% |
| 2024年10月期 | +24.58% | +15.22% |
| 2025年10月期 | −10.28% | +2.05% |
| 2025年11月〜2026年4月(半年) | −14.41% | — |
出典: 年次報告書(2022〜2025年10月期)、半期報告書(2026年4月期)。TMF は基準価額ベース
米国の中央銀行(FRB)が2022年3月に利上げを始めた後の2年間で、TMF は1年で7割以上、翌年も4割以上を失った。
目を引くのは2025年10月期で、指数はプラス(+2.05%)だったのに、TMF はマイナス(−10.28%)だった。指数がほぼ横ばいの年に、毎日のリセットによる目減りが出た例である。
長く持った場合の成績
年次報告書には、TMF と指数の年率リターンが並べて載っている。
| 2025年10月31日までの年率 | 1年 | 5年 | 10年 |
|---|---|---|---|
| TMF | −10.28% | −33.46% | −13.06% |
| ICE U.S. Treasury 20+ Year Bond Index | +2.05% | −7.86% | −0.31% |
出典: 年次報告書(2025年10月期)
5年の年率で見ると、指数が年7.86%ずつ下がった期間に、TMF は年33.46%ずつ下がった。単純な3倍(約−24%)より大きく下回っている。2025年12月31日までの年率でも、5年で TMF −34.72%、指数 −8.29% だった(要約目論見書)。
チャート
TMF は2023年12月4日に、10口を1口にまとめる併合を行っている(年次報告書、2023年10月期)。それより前の価格や分配金を見るときは、併合を調整した値かどうかに注意したい。
TMF の経費率と分配金は?
経費率
| 項目 | 比率 |
|---|---|
| 運用報酬 | 0.75% |
| その他の経費 | 0.12% |
| 投資先ファンド(TLT など)の経費 | 0.14% |
| 経費の合計(免除前) | 1.01% |
| 運用会社による免除 | −0.11% |
| 経費の合計(免除後) | 0.90% |
出典: 要約目論見書(2026年2月27日)。免除の取り決めは2027年9月1日まで
実際にかかった経費率は、2025年10月期の1年間で0.76%、2025年11月〜2026年4月の半年間は年率0.81%だった(年次報告書・半期報告書。投資先ファンドの経費は含まない)。
なお、前の節の目論見書の試算は、経費と、3倍の持ち高を作るための借入コストをゼロと仮定している。実際の成績は、これらの分だけ試算より下がる。
分配金
目論見書の方針は「少なくとも年1回」の分配である。実際には年に複数回出ている(2024年12月・2025年6月・2025年12月・2026年6月など)。
| 会計年度(10月末まで) | 1口あたりの分配金 |
|---|---|
| 2025年10月期 | 1.58ドル |
| 2024年10月期 | 1.69ドル |
| 2023年10月期 | 1.79ドル |
| 2022年10月期 | 0.80ドル |
出典: 年次報告書(2025年10月期)。2023年12月の併合を調整した値。2025年11月〜2026年4月の半年間は0.68ドル(半期報告書)
分配金があっても、前の節のとおり値下がりがそれを大きく上回る年がある。分配金を目的に持つ商品ではない。
TMF のリスクは?
目論見書に書かれている主なリスクを整理する。
- 1日で全額を失う可能性: 「指数が1日で33%を超えて下がると、投資家は1日で元本の全額を失う可能性がある」。3倍のため、指数の33%強の下落でファンドの下落は100%に達する
- 長く持つほど指数の3倍からずれる: 前の節のとおり、値動きがあると、指数が横ばいやわずかな上昇でも損をすることがある
- 金利のリスク: 金利が上がると長期国債の価格が下がり、その3倍の影響を受ける
- スワップの相手先のリスク: 契約の相手先が限られるため、相手先の信用力の影響を受ける
- 分配金の課税: 目論見書は「ファンドの分配は、多くのETFより大幅に多くなることがある」と書いている
目論見書が想定する使い手
目論見書は、次のように書いている。
このファンドはすべての投資家に適しているわけではない。日々3倍の成果を目指すことの影響と、レバレッジのリスクを理解し、ポートフォリオを頻繁に見る意思のある、知識のある投資家だけが使うよう設計されている。ポートフォリオを積極的に見て管理するつもりのない投資家には向いておらず、そうした投資家が使うことは想定されていない(要約目論見書、筆者訳)
「TMF はおすすめしない」「長期保有に向かない」という評価は、外部の意見というより、運用会社自身の説明である。金利の見通しが当たっても、その間の値動きが激しければ成績は3倍にならない。持つ場合は、毎日の値動きを確認し、どこまでの下落を許容するかを先に決めておくことが前提になる。
TMF は NISA で買える?
2024年からの新しいNISAでは、成長投資枠の対象から「デリバティブ取引を用いた一定の投資信託等」が除外されている(金融庁)。TMF はスワップ契約で3倍の値動きを作る商品で、つみたて投資枠の対象でもない。
個別のETFがNISAの対象になるかどうかは、証券会社が公表している対象銘柄の一覧で確かめてほしい。
TMF はどこで買える?
TMF は米国の NYSE Arca に上場しているため、米国株を扱う証券会社で売買できる。取り扱いの有無は証券会社ごとに異なり、変わることもあるため、各社のサイトで確かめてほしい。
私自身はSBI証券を主に使用していますが、取り扱い銘柄によっては購入できない場合があります。その際は、サクソバンク証券やIG証券などでCFDを利用することもあります。
まとめ
- TMF は、残存20年超の米国債の指数の「1日の値動き」の3倍を目指すETFで、中身は TLT と、TLT を対象にしたスワップ契約である
- TLT と同じ指数を見ているが、毎日リセットされるため、長く持つと指数の3倍にはならない。2025年10月期は、指数がプラスだったのに TMF はマイナスだった
- 経費率は免除後0.90%で、TLT(0.15%)や EDV(0.05%)より高い
- 運用会社自身が、頻繁に見て管理する投資家向けの商品だと説明している
一方で、TLTのような債券ETFは定期的に配当(毎月配当)があるため、より安定して持ち続けることができます。
個人的には、金利の方針が明確になる連邦公開市場委員会(FOMC)の発表を待って、TMFを購入するタイミングを考えています。
この方法なら、レバレッジを利用して短期間での利益を目指しつつ、リスクも管理しやすいかと思います。
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