このサイトは、私( @mifsee )が個人的に学びながら企業分析や銘柄分析を進め、その過程を記録としてまとめているものです。
あくまで個人の調査・整理を目的とした内容であり、誤りや実際と異なる情報が含まれる可能性があります。
また、MifseeではAI技術を活用した運用や、技術習得を目的とした実験的な取り組みも行っています。ご覧いただく際には、その点をご理解のうえご利用ください。
はじめに
量子コンピュータは、今のコンピュータでは時間がかかりすぎる計算を、まったく違う仕組みで解こうとする次世代のコンピュータです。
2026年は、量子コンピュータの会社が株式市場に一気に増えた年になりました。ハネウェル傘下だった Quantinuum が17億ドルを集めて上場し、Infleqtion・IQM・Xanadu・Pasqal なども SPAC(上場のための買収目的会社)との合併で上場しました。米国政府も、量子企業の株式を持つことを条件にした支援を始めています。
ただ、上場企業が増えた分、どこに注目すればよいかは分かりにくくなっています。売上がほとんど無い会社も多く、「量子関連」として名前が挙がっていても、量子コンピュータそのものは作っていない会社もあります。
そこでこの記事では、各社の決算資料(米SECの提出書類)を読み、量子コンピュータでどれだけ売上を立てているかを中心に、注目する4銘柄を選びました。選んだ理由と懸念、新しく上場した会社や大手の動き、日本企業の動きもあわせてまとめています。数字は2026年10月25日時点で公表済みの資料によるものです。
量子コンピュータとは?今のコンピュータと何が違う?
今のコンピュータは、情報を「0か1」のビットで扱い、1つずつ順番に計算する。量子コンピュータは、「0と1を重ね合わせた状態」をとれる量子ビットを使い、たくさんの可能性を同時に扱える。
そのため、次のような「組み合わせが爆発的に多い問題」で、今のコンピュータを大きく上回ると期待されている。
- 新薬・新素材の開発: 分子の動きをそのまま計算する
- 金融: 資産の組み合わせやリスクの計算
- 物流・製造: 配送ルートや生産計画の最適化
- 暗号: 今のインターネットの暗号を解いてしまう可能性がある(そのため、量子コンピュータでも解けない「耐量子暗号」への切り替えも始まっている)
ただし、量子ビットはとても壊れやすく、計算の途中で誤りが起きやすい。誤りを自動で直しながら長く計算できる「誤り耐性」のある量子コンピュータは、まだ完成していない。IBM やマイクロソフトは、実用的な機械の完成を2029年ごろとしている。
量子ビットの作り方(方式)と、上場企業
量子ビットの作り方にはいくつかの方式があり、どれが勝つかはまだ決まっていない。
| 方式 | 特徴 | 上場企業 | 主な非上場企業 |
|---|---|---|---|
| 超伝導 | 極低温で動く回路。研究が最も進んでいる | IBM、グーグル(GOOGL)、リゲッティ(RGTI)、IQM(IQMX)、D-Wave(QBTS) | — |
| イオントラップ | 電場で捕まえたイオンを使う。誤りが少ない | IonQ(IONQ)、Quantinuum(QNT) | — |
| 中性原子 | レーザーで並べた原子を使う。数を増やしやすい | Infleqtion(INFQ)、Pasqal(PSQL) | Atom Computing、QuEra |
| 光 | 光の粒(光子)を使う。常温で動く部分が多い | Xanadu(XNDU) | PsiQuantum |
| シリコン | 半導体の製造技術を生かす | インテル | Diraq、Silicon Quantum Computing |
| トポロジカル | 原理的に誤りに強いとされる新しい方式 | マイクロソフト(MSFT) | — |
D-Wave は、最適化の問題に特化した「量子アニーリング」という方式でも先行している。
なぜ今、量子コンピュータが注目されているのか?
大手が「量子優位」と実用機の時期を示し始めた
- グーグル: 2025年10月、量子チップ Willow で、スパコンより約1万3,000倍速く、しかも結果を検証できる計算に成功したと発表した
- IBM: 2026年7月の決算発表で、量子専用の半導体工場の建設と、5年で100億ドルを超える量子への投資を表明した。2029年に初の大規模な誤り耐性機を届ける計画は予定どおりとしている
- エヌビディア: 2025年10月、GPU と量子プロセッサをつなぐ仕組み NVQLink を発表し、量子コンピュータの開発企業17社が参加した
米国政府が、株式を持つ形で支援を始めた
米商務省は2026年5月、量子企業など9社に、合計20.13億ドルを支援する基本合意を結んだ。支援の条件として、政府が各社の少数株式を持つのが特徴である。
| 会社 | 支援額(予定) |
|---|---|
| IBM(量子の半導体工場) | 10億ドル |
| GlobalFoundries | 3.75億ドル |
| D-Wave、Quantinuum、Infleqtion、PsiQuantum、Atom Computing | 各1億ドル |
| リゲッティ | 最大1億ドル |
| Diraq | 最大3,800万ドル |
Quantinuum は9月に正式な契約を結び、商務省が同社の株式を受け取った。
また、国防総省の研究機関 DARPA は、「実用規模の量子コンピュータを本当に作れるか」を評価する事業(QBI)を進めている。最終段階(ステージC)には、IBM・IonQ・マイクロソフト・PsiQuantum・Atom Computing・Diraq の6社が進んでおり、1社あたり最大3億ドルが支払われうる。
量子コンピュータの「どこで儲かるか」地図
量子コンピュータにお金が流れる場所を、「作る」「支える」「守る」の3つに分けると次のようになる。

| 層 | 何をするか | 主役(厳選外) | 厳選銘柄 |
|---|---|---|---|
| 作る | 量子コンピュータを開発し、クラウドや装置として売る | IBM、グーグル、マイクロソフト | IONQ、QNT、QBTS、RGTI |
| 支える | GPU との接続、半導体の製造、部品 | エヌビディア、GlobalFoundries | — |
| 守る | 量子コンピュータでも解けない暗号(耐量子暗号) | — | — |
今のところ売上が立ち始めているのは「作る」層の専業企業である。研究機関や政府、大企業の研究部門が、量子コンピュータ本体やクラウドでの利用時間を買っている。
MiFsee厳選の量子コンピュータ関連銘柄4選
選ぶ基準は、MiFsee のテーマ記事共通の3つである。
- テーマの事業が会社の中心、またはその売上が開示されている
- 売上が伸びている(直近の決算が前年同期比でプラス)
- 数字で言える材料がある
巨大企業(IBM・グーグル・マイクロソフト)は、量子が業績のごく一部のため厳選から外した。上場して間もない会社や、決算を訂正した会社も外している(後の表を参照)。
IonQ(IONQ)|売上が最も大きい専業、通期で2.8億ドル超の見通し

イオントラップ方式の量子コンピュータを作る米国企業で、専業の中では売上が最も大きい。
選んだ理由
- 2026年4〜6月期の売上は8,005万ドルで、前年同期比287%増。5四半期続けて過去最高を更新し、会社は通期の売上見通しを2.8億〜2.9億ドルに引き上げた
- DARPA の評価事業で最終段階(ステージC)に進み、2029年までに最大3億ドルを受け取りうる
- 現金と投資は30億ドルあり、半導体工場を持つ SkyWater の買収など、買収で事業を広げている
懸念
- 2026年4〜6月期の GAAP 純損失は18.7億ドル。多くはワラント(新株予約権)の評価の変動によるものだが、本業の調整後 EBITDA も1.2億ドルの赤字である
- 買収が多く、量子コンピュータ本体の売上がどれだけかは見えにくい
決算の詳しい中身は IonQ(IONQ)の記事 にまとめている。
クオンティニュアム(QNT)|2026年6月に上場したイオントラップの大手

ハネウェルの量子部門と英国の Cambridge Quantum が一緒になってできた会社で、2026年6月にナスダックに上場した。IonQ と同じイオントラップ方式である。
選んだ理由
- 上場で17億ドルを集め、2026年6月末の現金と短期投資は21億ドル。専業の中で資金力が最も大きい部類に入る
- 2026年4〜6月期の売上は800万ドルで、前年同期の200万ドルから279%増えた。上場後初めての通期見通しとして、2026年の売上を2,800万〜3,200万ドルとした
- 米商務省と正式な支援契約を結び、政府が株主になった
懸念
- 売上の規模は IonQ の10分の1程度で、赤字が続いている
- 株式の約48%をハネウェルが持っており、大株主の売却が株価の重しになる可能性がある
D-Wave(QBTS)|受注が急増、量子アニーリングで先行

最適化の問題に強い「量子アニーリング」方式で先行し、汎用型(ゲート型)の量子コンピュータも開発している。
選んだ理由
- 2026年1〜6月の受注(ブッキング)は3,550万ドルで、前年同期の290万ドルから1,120%増えた。2,000万ドルのシステム販売の案件も含む
- 今後売上になる契約残高(RPO)は4,070万ドルで、前年同期の530万ドルから668%増えた
- 米商務省から1億ドルの支援を受ける予定
懸念
- 2026年4〜6月期の売上は310万ドルで、前年同期からほぼ横ばいだった。受注が売上に変わるかを見る必要がある
- 純損失は4,800万ドルで、費用が前年同期の約2倍に増えている
決算の詳しい中身は D-Wave(QBTS)の記事 にまとめている。
リゲッティ・コンピューティング(RGTI)|超伝導の専業、政府の支援も

超伝導方式の量子コンピュータを、チップの製造から自社で手がける米国企業である。
選んだ理由
- 2026年4〜6月期の売上は510万ドルで、前年同期の180万ドルから185%増えた
- 現金と有価証券は5.41億ドルで借入が無く、米商務省から最大1億ドルの支援を受ける予定
懸念
- 売上の規模はまだ小さく、GAAP 純損失は5,260万ドルに広がった
- 同じ超伝導方式の IBM・グーグルや、上場した IQM との競争が激しい
決算の詳しい中身は リゲッティ(RGTI)の記事 にまとめている。
2026年に上場した量子企業と、厳選から外した銘柄
2026年に新しく上場した量子企業
| 会社 | 方式 | 上場 | 確認できた数字 |
|---|---|---|---|
| Quantinuum(QNT) | イオントラップ | 2026年6月(IPO) | 厳選(上記) |
| Infleqtion(INFQ) | 中性原子 | 2026年2月(SPAC) | 2026年4〜6月期の売上1,354万ドル。発表の5日後に売上と見通しを訂正した |
| Xanadu(XNDU) | 光 | 2026年3月(SPAC) | 2025年の売上460万ドル |
| Horizon Quantum(HQ) | ソフトウェア | 2026年3月(SPAC) | 2026年4〜6月期の売上はゼロ |
| IQM(IQMX) | 超伝導(フィンランド) | 2026年7月(SPAC) | 2026年1〜6月の売上890万ユーロ、受注残1億210万ユーロ超 |
| Pasqal(PSQL) | 中性原子(フランス) | 2026年8月(SPAC) | 2025年の売上1,640万ユーロ |
直近6か月の値動き(タップで拡大)
右上:6か月騰落率 左下:期間最高値からの下落率 橙:50日線 灰:200日線 チャートは毎週更新
上場して間もなく、比べられる決算がまだ少ないため、厳選からは外した。Infleqtion は売上の規模が大きいが、上場直後に決算の訂正があったため、次の決算を見てから判断する。
厳選から外した米国上場企業
| 会社 | 外した理由 |
|---|---|
| IBM | 量子に5年で100億ドル超を投じるが、会社全体から見れば一部。2029年の誤り耐性機の計画は注目 |
| アルファベット(GOOGL) | グーグルの量子研究は最先端だが、業績への影響はごく小さい |
| マイクロソフト(MSFT) | トポロジカル方式の Majorana を開発。業績への影響はごく小さい |
| エヌビディア(NVDA) | 量子とGPUをつなぐ仕組みを提供。量子の売上は開示されていない |
| ハネウェル(HON) | Quantinuum の約48%を持つ。上場に伴い、2026年4〜6月期に約66億ドルの利益を計上した。量子への間接的な投資先になる |
| クオンタム・コンピューティング(QUBT) | 2026年4〜6月期の売上は560万ドル。買収した半導体工場の売上が中心で、量子コンピュータ本体の売上は見えにくい。QUBTの記事 |
直近6か月の値動き(タップで拡大)
右上:6か月騰落率 左下:期間最高値からの下落率 橙:50日線 灰:200日線 チャートは毎週更新
量子セキュリティ(耐量子暗号)の銘柄
量子コンピュータが実用化されると、今の暗号が破られるおそれがある。そのため、量子コンピュータでも解けない暗号に切り替える需要が生まれている。次の2社は量子コンピュータは作っていないが、この分野の銘柄として名前が挙がる。
| 会社 | 事業 | 直近の数字 |
|---|---|---|
| シールSQ(LAES) | 耐量子暗号を組み込んだ安全なチップ | 2026年1〜6月の売上は約1,100万ドルで、前年同期比約120%増。シールSQの記事 |
| アーキット・クアンタム(ARQQ) | 暗号化ソフトウェア | 2026年9月期の通期売上は約100万ドルで、規模は小さい。アーキットの記事 |
直近6か月の値動き(タップで拡大)
右上:6か月騰落率 左下:期間最高値からの下落率 橙:50日線 灰:200日線 チャートは毎週更新
量子コンピュータに投資できるETFは?
Defiance Quantum ETF(QTUM)

量子コンピュータと機械学習の関連銘柄に投資するETFで、2018年に設定された。純資産は約51.5億ドル、経費率は年0.40%、組入れ銘柄は89(2026年10月、運用会社の公式サイト)。
組入れの上位には、パランティア・クラウドフレア・マイクロソフトなどのソフトウェア企業や、日本の NEC・富士通も入っている。量子コンピュータの専業企業だけに投資するETFではない点に注意が必要である。
日本の関連企業
日本企業は、私自身が深く調べられていないため、この記事では評価していない。会社や共同研究先の公式発表で確認できた事実だけをまとめる(厳選の対象外)。
| 会社(コード) | 確認できた動き |
|---|---|
| 富士通(6702) | 理研と共同で、256量子ビットの超伝導量子コンピュータを2025年4月に発表。1,000量子ビット機の設置を計画している |
| 浜松ホトニクス(6965) | 中性原子方式の国内スタートアップ Yaqumo などと、量子コンピュータ用の光学システムで覚書を結んだ(2026年6月) |
| フィックスターズ(3687) | 量子コンピュータ向けのソフトウェア開発キット Amplify を提供。富士通製の量子コンピュータへの対応を発表(2026年8月) |
| 東芝(非上場) | 2023年12月に上場を廃止しており、今は株を買えない。量子暗号通信では、NTTドコモビジネス・NECと、東京・名古屋・大阪を結ぶ約600kmの量子暗号通信網の構築を始めた(2026年6月) |
直近6か月の値動き(タップで拡大)
右上:6か月騰落率 左下:期間最高値からの下落率 橙:50日線 灰:200日線 チャートは毎週更新
以前この記事で挙げていたQDレーザ(6613)とセック(3741)は、最近の量子関連の発表が確認できなかったため外した。
量子コンピュータの課題と、投資するうえでの注意点
技術:誤り耐性のある実用機はまだ無い
各社の機械は、まだ研究や試験的な利用が中心である。実用的な誤り耐性機の完成は、大手でも2029年ごろとされており、それまでに方式の勝ち負けがはっきりする可能性がある。
お金:売上に比べて株価の期待が大きい
専業の会社は売上が数百万〜数千万ドルの規模が多く、赤字が続いている。株価は将来への期待で大きく動きやすく、資金調達で株式が増えることも多い。
決算の読み方:純損失がぶれやすい
IonQ やリゲッティのように、ワラント(新株予約権)の評価の変動で、純損失が本業と関係なく大きく動く会社が多い。売上・受注・調整後の損益とあわせて見る必要がある。
まとめ
量子コンピュータの関連銘柄を決算資料で見直してみると、2026年は上場企業が一気に増え、米国政府も株主になる形で支援を始めた、大きな転機の年だと感じます。
その中で、売上の規模と伸びで頭ひとつ抜けているのは IonQ で、資金力では新しく上場した Quantinuum が並びます。D-Wave は受注の急増、リゲッティは政府の支援と、それぞれ見るべき数字が違います。
ただ、どの会社も赤字で、実用的な量子コンピュータの完成は2029年ごろとされています。新しく上場した会社は、決算が数回たまってから比べていきます。
この記事は、決算が出るたびに数字を見直していきます。


















